退職金、自己都合だといくら減る? 辞めるタイミングで手取りが激変する『勤続年数』のルール

退職を考えたとき、多くの人が気になるのが「退職金はいくらもらえるのか」「自己都合だとどれくらい減るのか」という点ではないでしょうか。

 

退職金は一律に決まった制度ではなく、会社ごとの退職金規程によって支給の有無や計算方法、自己都合退職時の支給率などが定められています。さらに、税制上は「退職所得控除」という大きな控除があり、勤続年数、とりわけ20年という節目が手取り額に大きな影響を与えます。

 

本記事では、退職金の基本的な仕組みから相場、自己都合退職による減額の実態、勤続年数による税制上の違いまでを整理し、「辞めるタイミング」でどれほど差が生まれるのかを具体的に解説します。

退職金とは

退職金とは、従業員が退職する際に会社から支給される金銭のことです。多くの場合は一時金として支払われますが、企業によっては企業年金などの形で分割支給されることもあります。長年の勤務に対する功労への報酬という側面と、退職後の生活を支える資金という側面の両方を持つ制度です。

 

退職金は、法律で一律に支給が義務付けられている制度ではありません。退職金の有無や支給額、計算方法、自己都合退職時の減額の有無などは、各社の就業規則や退職金規程によって決まります。同じ勤続年数でも会社によって受取額が大きく異なるのは、この「会社ごとの設計」の違いによるものです。

 

もっとも、いったん退職金制度を設けた場合は、その内容に従って支給する法的義務が生じます。規程に「勤続◯年以上で支給」「自己都合退職は支給率◯%」などと定められていれば、会社はそのルールどおりに支払わなければなりません。

退職金が支給される仕組み

退職金が支給される場合でも、一般に次の要素で金額が決まります。

 

  • 勤続年数(長いほど増えやすい)
  • 退職理由(会社都合/自己都合などで支給率が変わることがある)
  • 役職・等級・基本給(給与比例、ポイント制など会社の設計による)
  • 企業規模・制度の有無(大企業・中小企業で水準が異なる傾向)

 

計算方法は会社によって異なり、典型例としては「基本給×勤続係数×支給率」のような給与比例型や、職能・等級などでポイントを積み上げるポイント制などがあります。

 

退職金にかかる税金(退職所得控除)

退職金は、受け取った金額がそのまま丸ごと課税されるわけではありません。税制上は「退職所得」として扱われ、退職所得控除という大きな控除枠が用意されています。控除額は勤続年数で決まり、特に勤続20年が一つの大きな節目になります。

 

  • 勤続20年以下:40万円×勤続年数(最低80万円)
  • 勤続20年超:800万円+70万円×(勤続年数−20年)

 

このように、退職所得控除は勤続年数によって計算式が変わります。特に20年を境に控除額の増え方が大きく変わるため、同じ退職金額でも「課税される金額」が変動します。退職金は、

 

(退職金 − 退職所得控除) ÷ 2に対して税金がかかる仕組みです。

 

つまり、控除額が大きくなればなるほど課税対象は小さくなり、結果として手取り額が増えることになります。

 

たとえば、勤続19年と20年では、退職所得控除額に差が生じます。その差は数十万円規模になることもあり、税額にも影響します。さらに21年、22年と超えていくほど控除額は積み増されていきます。

 

このため、退職のタイミングが勤続20年前後にある場合、わずか1年の違いでも手取り額に差が出る可能性があります。

 

参考:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」

 

退職金の計算方法

退職金の金額は、法律で一律に決まっているわけではなく、会社ごとの退職金規程によって算定方法が異なります。主な計算方式には「賃金連動型」「ポイント方式」「別テーブル方式」「定額方式」の4つがあります。それぞれ仕組みと特徴が異なるため、自社がどの方式を採用しているかを確認することが重要です。

 

賃金連動型

退職時の賃金(主に基本給)と勤続年数に応じて退職金を算定する方式です。もっとも伝統的な計算方法で、多くの企業で採用されてきました。

 

退職時の賃金(基本給) × 勤続年数係数 × 退職事由別係数(自己都合または会社都合)

 

退職直前の基本給が高いほど退職金も増える仕組みです。そのため、昇進や昇給のタイミングによって受取額が変わる可能性があります。一方で、退職前に賃金が下がると退職金も減るリスクがあります。

 

ポイント方式

毎年、勤続や役職、評価などに応じてポイントを付与し、退職時の累積ポイントによって退職金を算定する方式です。近年導入が増えている仕組みです。

 

(勤続ポイント+職能ポイント)の累積 × 1ポイントあたりの単価 × 退職事由別係数(自己都合または会社都合)

 

この方式では、在職中の評価や役職が反映されやすくなります。成果や貢献度が退職金に直接影響するため、能力主義に適した設計といえます。退職直前の給与に左右されにくい点も特徴です。

 

別テーブル方式

退職時の賃金ではなく、役職や等級ごとにあらかじめ基礎金額を設定し、それをもとに退職金を算定する方式です。

 

役職・等級に応じて設定した基礎金額 × 勤続年数係数 × 退職事由別係数(自己都合または会社都合)

 

この方式では、役職が上がると基礎金額が変わるため、昇進の影響は受けますが、賃金そのものの増減には左右されにくいのが特徴です。制度設計が比較的安定しやすい方法といえます。

 

定額方式

賃金や役職に関係なく、勤続年数のみに応じて退職金を算定する方式です。

 

この方式では、同じ勤続年数であれば、原則として支給額は同額になります。成果や給与の違いは反映されません。シンプルで分かりやすい反面、能力や貢献度を退職金に反映させにくいという特徴があります。

退職金の相場

退職金の相場は、学歴や勤続年数だけでなく、企業規模(従業員数)や退職理由によって大きく異なります。

大学卒・勤続20年の場合(中小企業モデル)

自己都合退職

  • 従業員100~299人規模:386万7,000円
  • 従業員50~99人規模:311万6,000円
  • 従業員10~49人規模:348万2,000円

 

会社都合退職

  • 従業員100~299人規模:498万3,000円
  • 従業員50~99人規模:356万9,000円
  • 従業員10~49人規模:403万7,000円

 

大学卒・定年退職の場合

  • 従業員100~299人規模:1,445万7,000円
  • 従業員50~99人規模:1,096万7,000円
  • 従業員10~49人規模:1,088万4,000円

 

定年まで勤めた場合、企業規模の違いがさらに顕著になります。規模が大きい企業ほど退職金水準が高い傾向が確認できます。

 

参考:独立行政法人勤労者退職金共済機構「8-3-3.退職金の世間相場はどれくらいですか?」

退職金は自己都合退職でいくら減るのか

自己都合で退職すると、退職金はどの程度減るのでしょうか。

結論から言えば、「減る可能性は高いが、必ず減るわけではない」というのが実態です。

 

調査によると、自己都合退職時に退職一時金を減額している企業は48.8%と、ほぼ半数にのぼります。一方で、減額していない企業は43.8%でした。つまり、約2社に1社が自己都合退職に対して何らかの減額ルールを設けているということになります。

 

自己都合退職で減額している企業の割合

調査対象281社の内訳は次のとおりです。

 

  • 減額あり:48.8%(137社)
  • 減額なし:43.8%(123社)
  • 不明:7.5%

 

数字だけを見ると拮抗していますが、「減額あり」が最も多い割合を占めています。自己都合退職を選ぶ場合、退職金が満額にならない可能性は十分にあると考えておくべきです。

 

企業規模による違い

従業員規模別に見ると、500人以上の企業では減額ありの割合が高い傾向が見られます。

 

特に500〜999人規模では64.7%が減額ありとなっており、大企業ほど退職理由による支給率の違いを明確に規定しているケースが多いことがわかります。

 

制度が整備されている分、自己都合退職は原則として減額する、という設計になっている企業が一定数存在します。

 

実際にどれくらい減るのか

減額がある企業のうち、56.2%は「自己都合退職の場合、定年退職と同じ支給率にならない」としています。つまり、自己都合では満額支給にならない企業のほうがやや多いということです。

 

減額の方法は主に「支給率」で調整されます。

 

たとえば、下記のように定めている企業があります。

 

  • 定年退職:100%支給
  • 自己都合退職:70〜90%支給

 

仮に基準退職金が1,000万円であれば、支給率80%の場合は800万円となり、200万円の差が生じます。退職金の基準額が大きいほど、減額の影響も大きくなります。

自己都合でも満額になる条件

自己都合退職でも一定条件を満たせば定年退職と同じ支給率になる企業もあります。その条件のほとんど(96.7%)が「勤続年数」です。

 

特に多いのは次の区分です。

 

  • 勤続20〜24年:31.0%
  • 勤続30〜34年:22.4%
  • 勤続25〜29年:20.7%

 

このデータから、多くの企業で「勤続20年前後」が重要な分岐点になっていることが読み取れます。

勤続20年が分岐点になる理由

勤続20年は、退職金の支給率だけでなく、税制面でも大きな節目です。退職所得控除の計算式は20年を境に変わるため、同じ退職金額でも課税額が異なる可能性があります。

 

そのため、勤続19年で退職と勤続20年を超えて退職では、退職金の額面だけでなく、最終的な手取りにも差が出る可能性があります。

 

参考:厚生労働省「令和6年度民間企業における退職給付制度の状況等に関する調査研究報告書」

 

まとめ

退職金の額は、会社の規程(労務)と、勤続年数による税制(税務)の掛け合わせで大きく変わります。辞めるタイミングを検討する際は、手取り額を正しく試算することが重要です。また、年の途中で退職した場合、退職金自体の税務手続きはもちろん、その年の給与に対する「確定申告」や、再就職先での「年末調整」など、ご自身での対応が必要になる場面も出てきます。

さらに企業側(経営者・人事担当者)にとっても、従業員とのトラブルを防ぐための退職金規程の見直しや、法改正に合わせた労務・税務のアップデートは欠かせません。

当事務所では税理士と社会保険労務士が連携し、制度の解釈から実務運用までワンストップでサポートいたします。新制度への対応や年末調整の準備について詳しく知りたい方は、ぜひお気軽に当事務所へご相談ください。

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